技術解説
クラウドとオンプレミス-それぞれのメリット・デメリットを徹底比較!
ITシステムを構築するプラットフォームには、大きく分けて、インフラを自社内で管理運用する「オンプレミス(オンプレ)」と、ベンダーが提供するリソースをレンタルする「クラウド」の2種類があります。
従来のオンプレミスとクラウドには、どのような違いがあるのでしょうか? 本記事ではオンプレミスとクラウドのメリット・デメリットを比較解説します。
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オンプレミスとクラウドの違いとは
「オンプレミス(on-premise)」の「premise」には、「構内」や「店内」といった意味があります。つまり、「オンプレミス」とはサーバーなどのITリソースを自社内やデータセンター内に設置し、ユーザー自身が管理運用する方式のことで「自社保有」や「自社運用」などとも呼ばれます。クラウド登場以前は、こうした「サーバーを自社運用する形態」が当たり前であったため、特別な名前は付いていませんでした。しかし、クラウドの登場以降、クラウドと明確に区別するために「オンプレミス」という名前が付けられました。
対して「クラウド」とは、クラウドベンダーが用意したITリソースをネットワーク越しに利用し、利用量に応じて料金を支払う方式のことです。オンプレミスとの大きな違いは、サーバーやパッケージソフトなどを自社で保有しないという点です。資産を保有せずに利用できることから、2019年現在、ITシステムを新規構築するのであれば、まず最初にクラウドサービスの利用を検討する「クラウドファースト」が当たり前となっています。また、内閣官房IT総合戦略室も「政府情報システムはクラウドサービスの利用を第一候補にする」という方針(クラウド・バイ・デフォルト原則)を打ち出しています。
オンプレミスとクラウド、それぞれのメリットとは
オンプレミスとクラウドには、それぞれどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?
オンプレミスのメリットは、カスタマイズの自由度が高いとことと、インフラを自社だけで占有できることが挙げられます。ハードウェアからソフトウェアまで、自社で確保・占有できるため、自社のビジネスにあわせた自由なシステムを構築できます。しかし、その反面で物理的なITリソースを確保しなければならないことから、初期費用が高くなる、調達に時間がかかる、購入した資産の管理が必要になるといったデメリットがあります。また、新機能の導入やセキュリティパッチの適用といった作業も自社で行わなければならないため、日々の運用コストが大きくなることもあります。
クラウドにもメリットとデメリットがありますが、概ねオンプレミスと表裏一体の関係となっています。クラウドはITリソースを自社で調達する必要がないため、初期費用が安く済む、調達に時間がかからない、資産管理が不要といったメリットがあります。対してデメリットは、インフラ全体がベンダーの管理下にあり、ユーザーはハードウェアを直接管理できないという点です。クラウドサービスによっては利用できない機能があったり、カスタマイズの自由度が低いため、自社のビジネスに必要な要件を満たせない可能性があります。また、クラウドサービスは、ほかのユーザーとサーバーやネットワークを共有して利用するのが一般的です。その際、同じ機器に「相乗り」しているユーザーが極端に負荷のかかる利用を行うと、ほかの利用者のパフォーマンスが低下する可能性もあります。
内閣官房IT総合戦略室の「政府情報システムにおけるクラウドサービスの利用に係る基本方針」では、クラウドサービスの利用メリットとして「効率性の向上」「セキュリティ水準の向上」「技術革新対応力の向上」「柔軟性の向上」「可用性の向上」の5つを挙げています。この5項目に沿って、オンプレミスとクラウドを比較してみましょう。
効率性の向上
オンプレミス
使用するリソースをすべて自社で用意するため、そのための費用がかかります。データセンターやハードウェアの確保には時間がかかるため、サービスの立ち上げには数週間程度のリードタイムが必要になることもあります。
クラウド
Web上のコントロールパネルから、オンデマンドでサーバーなどのリソースを起動させることができるため、リードタイムは数秒から数分と非常に高速です。ハードウェアを調達する必要もなく、利用した分だけ料金を支払えばよいため、無駄な費用もかかりません。
セキュリティ水準の向上
オンプレミス
ファイアウォールや侵入検知システムなどのセキュリティ機器は、ユーザー自身で導入・運用する必要があります。OSやミドルウェアのバージョンアップやセキュリティパッチの適用もユーザー自身で行わなければなりません。
クラウド
多くのクラウドベンダーでは、ファイアウォールのようなセキュリティ機能は、基本機能として提供されています。データベースなどのマネージドサービスでは、ミドルウェアの運用管理をベンダーが行ってくれるため、ユーザーがセキュリティ対策を意識する必要はありません。
技術革新対応力の向上
オンプレミス
新技術によるサービスを導入しようとすると、そのためのハードウェアの確保や構築手順の確立、評価検証といった作業をユーザー自身で行わなければなりません。そのため、新技術を気軽に試すのには不向きです。
クラウド
ベンダーが提供するサービスを利用することになるため、特別な準備なしに試行することができます。ただし、使用したい技術がそのベンダーによってサービス化されるとは限りません。
柔軟性の向上
オンプレミス
リソースを追加したい場合、その分のハードウェアへの追加投資が必要となるため、気軽にリソースの増減が行えません。瞬間的なアクセス増などに対応しようとすると、事前に余裕を持ったハードウェアを用意し、備えておく必要がありますが、過剰投資となってしまう可能性もあります。
クラウド
クラウドではリソースの追加や削除、変更が容易に行えます。そのため、アクセスが急増した際にその場でサーバーの台数を増やすことで障害を回避したり、負荷のピークが過ぎた後にサーバーを減らすことで過剰投資を防いだりといった「サイジングの最適化」が可能です。また、利用した分のみの従量課金のため、短期間の利用や検証目的での試用にも向いています。
可用性の向上
オンプレミス
一般的にオンプレミスで高い可用性を実現するためには、大きなコストが発生します。意図しないサーバーの停止やネットワークのダウンを防ぐためには、ハードウェアを冗長化する必要がありますが、単純計算でハードウェアを調達する分量は2倍以上になってしまいます。また、障害時のフェイルオーバーや切り戻しといった仕組みもユーザー自身で実装する必要があります。
クラウド
クラウドでも複数のサーバーを起動し、冗長化をする場合、かかるコストは2倍以上になります。しかし、ハードウェアを購入する必要がないため、最小限の投資で可用性を向上させることができます。また、クラウドベンダーによっては、独自にデータセンターの設備を内部的に冗長化構成にしていたり、サーバーが稼働しているハードウェアが故障した場合に自動的に別のハードウェア上に移動して再起動する「自動フェイルオーバー機能(HA機能)」を提供しています。
「クラウド」という有力な選択肢
オンプレミスとクラウドを比較すると、コストの削減や柔軟なリソース増減、新技術へのいち早い対応など、さまざまな面でクラウドに軍配が上がることがわかります。「クラウドファースト」が当たり前となり、既存システムのクラウド移行が進んでいるのも、このような理由によるものです。
まだクラウドを導入していないというのであれば、一度自社のビジネスや利用しているシステムを見直し、積極的なクラウドの利用を検討してみてはいかがでしょうか。
とはいえ、業務フローやセキュリティポリシー上の理由で完全なクラウド化が不可能なシステムも存在するでしょう。どうしてもオンプレミスが必要な場合の折衷案として、オンプレミスとクラウドを接続する「ハイブリッドクラウド」という選択肢も有力です。