FJcloud実践
Acronis Cyber Protect Cloudを利用してFJcloud-Vのオブジェクトストレージサービスにバックアップする方法
クラウド環境のバックアップ、コストと可用性のバランスに悩んでいませんか?
Acronis Cyber Protect
Cloud(以降Acronis)とFJcloud-Vのオブジェクトストレージサービスを組み合わせることで、その悩みを解決できるかもしれません。
この記事では、Acronisを利用してFJcloud-Vのオブジェクトストレージにバックアップする方法をご紹介します。
※2025年7月時点で、できない操作があります。後述していますのでご利用の際はご確認お願いします。
前提条件
本記事は、以下の前提知識がある方を想定しています。
- FJcloud-Vの基本的なコントロールパネルの操作、サービスを利用する知識
- Acronisの基本的な操作、知識
- オブジェクトストレージサービスの基本的な知識
検証概要
Acronisを使い、FJcloud-Vのオブジェクトストレージサービスにバックアップ/リストアを行います。
機能・サービスの紹介
Acronis
FJcloud-Vで利用しているサーバーやお客様のオンプレミス環境にある物理・仮想サーバー、クライアントOSを含めたシステムやデータを、まるごとバックアップ・復元できるサービスです。
オブジェクトストレージサービスへのバックアップ
オブジェクトストレージサービスへのバックアップは、オプション「アドバンスドバックアップ」が必要になります。
オブジェクトストレージサービス
オブジェクトストレージサービスは大容量ファイルの保管場所として、容量を気にすることなく利用できるストレージサービスです。
インターフェイスとしてREST APIの提供しています。
2025年7月時点実現可否
項目 | 可否 |
---|---|
Acronisからオブジェクトストレージサービスへ接続 | 〇 |
フルバックアップ | 〇 |
増分バックアップ | 〇 |
ファイル/フォルダのリストア(AcronisのWebコンソール) | 〇 |
増設ディスクのリストア(AcronisのWebコンソール) | 〇 |
マシン全体のリストア(AcronisのWebコンソール) | ✕ |
マシン全体のリストア(ブータブルメディア) | ✕ |
「✕」について、Acronis社へ問い合わせを行いトラブルシューティングを実施しました。
結果、現時点では対処方法なく「✕」になっています。
検証
検証リソース
項目 | 内容 |
---|---|
利用ゾーン | jp-west-21 |
プライベートLAN | 1本 |
ルーター | router.large(SNAT用) |
サーバータイプ | h2-medium8×1 |
OS | Windows Server 2022 DC |
増設ディスク | 高速フラッシュドライブ 100GB |
バックアップサービス | バックアップ/セキュリティサービス(Acronis Cyber Protect Cloud) |
オブジェクトストレージサービス | バックアップ容量分 |
オブジェクトストレージサービスへのバックアップ/リストア検証
Acronisによるバックアップおよびリストアを、オブジェクトストレージサービスを保存先として実施できるか確認します。
バックアップ元サーバーの構築
- クラウド操作方法ガイド(ネットワーク:プライベートLAN:作成)を参考にプライベートLANを作成します。
- クラウド操作方法ガイド(コンピューティング:サーバーの作成)を参考にサーバーを作成します。
- 今回は「Windows Server 2022 DC」で作成し、プライベート側のNICを作成したプライベートLANに接続します。
- クラウド操作方法ガイド(コンピューティング:ディスクの作成)を参考に「高速フラッシュドライブ」を作成し、サーバーに接続します。
- 追加したディスクの設定方法(マウント手順):Windows系OSの場合を参考にOS上から作成した増設ディスクをマウントします。
- クラウドユーザーガイド(ニフクラ バックアップ/セキュリティサービス(Acronis Cyber Protect Cloud):導入)を参考にAcronisのエージェントをサーバーにインストールします。
オブジェクトストレージサービスへの接続
- オブジェクトストレージサービスにバケットを作成します。
- クラウド操作方法ガイド(オブジェクトストレージサービス:アカウント詳細)を参考にオブジェクトストレージサービスの「アクセスキー」、「シークレットキー」を取得します。
- バケットの作成は事前にAPIから実施する必要があります。
今回はAWS cliのDockerイメージから、オブジェクトストレージサービスのバケット作成を実施します。- アクセスキー等を登録します。
オブジェクトストレージサービスのエンドポイントはニフクラAPI(エンドポイント)_オブジェクトストレージサービスを参照してください。$ docker run --rm -ti -v ~/.aws:/root/.aws amazon/aws-cli --endpoint-url https://jp-west-2.storage.api.nifcloud.com configure Unable to find image 'amazon/aws-cli:latest' locally latest: Pulling from amazon/aws-cli ~ Status: Downloaded newer image for amazon/aws-cli:latest AWS Access Key ID [None]: 【アクセスキー】 AWS Secret Access Key [None]: 【シークレットキー】 Default region name [None]:jp-west-2 Default output format [None]: json
- バケットを作成します。
$ docker run --rm -ti -v ~/.aws:/root/.aws -v $(pwd):/aws amazon/aws-cli --endpoint-url https://jp-west-2.storage.api.nifcloud.com s3api create-bucket --bucket acronisbucket ~ { "Location": "/acronisbucket" }
- バケットのaclでバケットの所有者のみが権限を持つことを確認しておきます。
$ docker run --rm -ti -v ~/.aws:/root/.aws -v $(pwd):/aws amazon/aws-cli --endpoint-url https://jp-west-2.storage.api.nifcloud.com s3api get-bucket-acl --bucket acronisbucket ~ { "Owner": { "DisplayName": "xxxx/xxxxxxx/xxxx", "ID": "XXXXXXX" }, "Grants": [ { "Grantee": { "DisplayName": "xxxx/xxxxxxx/xxxx", "ID": "XXXXXXX", "Type": "CanonicalUser" }, "Permission": "FULL_CONTROL" } ] }
- アクセスキー等を登録します。
- Acronisから作成したバケットをバックアップ先に登録します。
- AcronisのWebコンソールにログインします。
- 左ペインの「バックアップストレージ」から「バックアップ」を選択します。
- 右ペインから「+ ロケーションの追加」を選択します。
- 左ペインで「パブリッククラウド」を選択し、中央ペインのプルダウンから「S3互換」を選択します。
- オブジェクトストレージサービスのアクセスキー、シークレットキーを入力します。他の項目は添付を参照してください。
- ロケーション名を入力し、バケットをプルダウンから選択します。事前に作成したバケットを指定してください。
- 接続したオブジェクトストレージサービスがバックアップストレージに登録されていることを確認します。
バックアップ実施
- オブジェクトストレージサービスにバックアップする保護計画を作成します。
- 作成のフロー詳細はクラウドユーザーガイド(ニフクラ バックアップ/セキュリティサービス(Acronis Cyber Protect Cloud):バックアップ)_保護計画の設定方法を参考にしてください。
- バックアップ先に先ほど接続したオブジェクトストレージサービスを選択します。バックアップの対象はマシン全体を選択しています。
- 以下画面が表示されるので「確認」を押下し先に進みます。
- 先ほど作成した保護計画を選択し、▶から実行します。
- アクティビティからバックアップが完了したことを確認します。
- オブジェクトストレージサービスにも実際にオブジェクトが格納されていることを確認します。
$ docker run --rm -ti -v ~/.aws:/root/.aws -v $(pwd):/aws amazon/aws-cli --endpoint-url https://jp-west-2.storage.api.nifcloud.com s3api list-objects-v2 --bucket acronisbucket ~ { "Contents": [ { "Key": "xxxxxx/.meta", "LastModified": "2025-05-19T01:32:21.155000+00:00", "ETag": "\"xxxxx\"", "Size": 386, "StorageClass": "STANDARD" }, { "Key": "YYUYYY.tibx/0000000000000", "LastModified": "2025-05-19T01:46:13.288000+00:00", "ETag": "\"YYYYYY\"", "Size": 16384, "StorageClass": "STANDARD" }, ~
- 増分バックアップできることも確認しておきます。
- 増分バックアップ前に「バックアップテスト1.txt」ファイルを作成しておきます。
- 再度先ほどのバックアップ計画からバックアップを実行します。
- 問題なくバックアップが完了することを確認します。
- 増分バックアップ前に「バックアップテスト1.txt」ファイルを作成しておきます。
リストア実施
- ファイル単位のリストア
- リストアテストのために増分バックアップ前に作成した「バックアップテスト1.txt」を削除します。
- リストアの基本操作はクラウドユーザーガイド(ニフクラ バックアップ/セキュリティサービス(Acronis Cyber Protect Cloud):復元)を参照してください。
- ファイル単位でリストアします。
- 「バックアップテスト1.txt」を選択します。
- 元のロケーションに復元します。
- 既存のファイルがある場合の動作を選択します。
- リストアが完了することを確認します。
- OS上から実際にファイルがリストアされているか確認します。
- リストアテストのために増分バックアップ前に作成した「バックアップテスト1.txt」を削除します。
- 増設ディスク単位のリストア
- 増設ディスクのみリストアするために、増設ディスクのみバックアップを取得しておきます。
- リストア時のテストのため、増設ディスクの領域にフォルダ「restoretest」とファイルを作成しておきます。
- リストアを実施します。
- リストアが完了することを確認します。
- リストア後事前に作成したフォルダ「restoretest」がないことを確認できます。
- 増設ディスクのみリストアするために、増設ディスクのみバックアップを取得しておきます。
オブジェクトストレージサービスとAcronisクラウドへのバックアップ速度比較
オブジェクトストレージサービスとAcronisクラウドにバックアップした場合の速度を比較してみます。
※いずれもベストエフォートのサービスとなります。本記事での性能値はあくまで参考値としてください。
- ダミーデータ作成
- バックアップ速度を比較するために、増設ディスクにランダムデータを生成します。今回パワーシェルスクリプトを利用して10GBのファイルを生成しています。
- 例:file_create.ps1
# ファイルサイズ (バイト単位) を指定 $FileSize = 10GB $ChunkSize = 1GB # 1GB ずつ書き込む # 出力ファイル名 $OutputFile = "E:\test\random_data.bin" # RNGCryptoServiceProvider を使用してランダムデータを生成 $rng = New-Object System.Security.Cryptography.RNGCryptoServiceProvider # ファイルストリームを作成 $fileStream = New-Object System.IO.FileStream($OutputFile, [System.IO.FileMode]::Create) # チャンクごとにランダムデータを生成してファイルに書き込む for ($i = 0; $i -lt ($FileSize / $ChunkSize); $i++) { $RandomData = New-Object byte[] $ChunkSize $rng.GetBytes($RandomData) $fileStream.Write($RandomData, 0, $ChunkSize) } # 残りのデータを書き込む $RemainingBytes = $FileSize % $ChunkSize if ($RemainingBytes -gt 0) { $RandomData = New-Object byte[] $RemainingBytes $rng.GetBytes($RandomData) $fileStream.Write($RandomData, 0, $RemainingBytes) } # ファイルストリームを閉じる $fileStream.Close()
- 例:file_create.ps1
- バックアップ速度を比較するために、増設ディスクにランダムデータを生成します。今回パワーシェルスクリプトを利用して10GBのファイルを生成しています。
- バックアップ実施
- Eドライブをオブジェクトストレージサービス、Acronisクラウドそれぞれにバックアップします。
- Eドライブをオブジェクトストレージサービス、Acronisクラウドそれぞれにバックアップします。
- 速度比較結果
- 今回の検証ではオブジェクトストレージへのバックアップのほうが2.2倍程度早かったです。
バックアップ先 オブジェクトストレージ Acronisクラウド 速度 61.9 MB/s 27.4 MB/s - ※検証環境の都合上、サーバーはjp-west-21、オブジェクトストレージサービスはjp-west-2を利用しています。
- Acronisクラウドは「Kanagawa, Japan」のため遠地へのバックアップになっていることも起因する可能性があります。
- ※検証環境の都合上、サーバーはjp-west-21、オブジェクトストレージサービスはjp-west-2を利用しています。
- 今回の検証ではオブジェクトストレージへのバックアップのほうが2.2倍程度早かったです。
- 【ご参考】バックアップ先別料金シミュレーション
- バックアップ先を検討する際のご参考に、それぞれにバックアップした場合の料金シミュレーションをしてみます。
- 比較対象
- Acronisクラウドに保存(保存容量課金プラン)
- オブジェクトストレージサービスに保存(ワークロード課金プラン)
- Windowsファイルサーバーに保存(ワークロード課金プラン)
- h2-medium8、標準フラッシュドライブ利用
- オブジェクトストレージサービスへのバックアップが一番安価になることがわかります。
- ※バックアップ対象をサーバー一台で試算しているため、環境によっては異なります。
- ※グローバル側の転送量は考慮していません(10TBまで無料)。10TBを超過する場合は転送量を想定して試算してください。
まとめ
ご紹介した手順で、オブジェクトストレージサービスへのバックアップ/リストア(ファイル/フォルダ/増設ディスク)ができることを確認できました。
料金面でもメリットがあると考えられます。
Acronisを利用する際のバックアップ先を検討する際のご参考になれば幸いです。
オブジェクトストレージサービスにバックアップしたデータからサーバー全体を復元する操作については、Acronisのエンハンスでできるようになったら検証を行う予定です。
注意事項
- 本記事は、実現性の確認を目的としています。実際に利用する場合は実作業前にお客様にて検証および動作確認を実施し、問題なく移行できるか確認してください。
- オブジェクトストレージサービスは弊社にてバックアップ先として動作保証していません。バックアップ先に利用するには、お客様にて検証してください。
- オブジェクトストレージサービスへのバックアップ/リストアですべての機能を網羅的に検証はできておりません。
- 本本記事の掲載時点の情報になります。最新の情報は各サービスのサービスページ、技術仕様ページを参照してください。
- 本記事に記載されている会社名、製品名等の固有名詞は各社の商号、登録商標または商標です。
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