基礎知識
テレワークとは? 導入時に考慮すべきポイントを確認しよう
テレワークとは「tele(離れた所)」と「work(働く)をあわせた造語で、総務省によれば「ICT(情報通信技術)を利用した時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」と定義されています。簡単に言いかえると、従来のように決められたオフィスに集まって働くのではなく、自宅やコワーキングスペースなどのオフィスから離れた場所で働くワークスタイルのことを指します。
オフィスから離れた場所で働くことを一口にテレワークと呼びますが、日本においては雇用形態により、会社員が自宅で業務を行う「雇用型」のテレワークとSOHOやフリーランスが自宅や個人のオフィスで業務を行う「自営型」のテレワークがあります。
なお、テレワークと同様の意味で「リモートワーク」という言葉も一般的に使われています。
目次
テレワークが必要となった背景とは
近年、テレワークの必要性が盛んに叫ばれているのには、次のような背景があります。
まず、1つが政府が近年「一億総活躍社会の実現」に向けて強く推進している「働き方改革」です。総務省によると、テレワークは「ワークライフバランスの実現」「人口減少時代における労働力人口の確保」「地域の活性化」などへも寄与するとされ、働き方改革実現の切り札となると言われています。
次に2020年開催予定(2021年に延期)であった東京での大規模なスポーツイベントとテレワーク・デイズが挙げられます。「テレワーク・デイズ」は、政府主導で推進されている働き方改革自体とは別に総務省と関係府省(厚生労働省、経済産業省、国土交通省、内閣官房及び内閣府)、東京都及び関係団体が連携して実施している運動です。テレワーク・デイズでは、東京での大規模なスポーツイベント開催時に予想される交通混雑緩和を図るため、2017年から7月24日を「テレワーク・デイ」と定め、働き方改革の国民運動を展開しています。特に2019年は東京での大規模なスポーツイベント開催前のテストとして、7月22日から9月6日まで1カ月以上にわたり、テレワークの一斉実施が呼びかけられました。
そして、最後に2020年2月頃から世界的な流行を見せている新型コロナウイルスの影響があります。働き方改革において、テレワークはITによって労働環境を改善する取り組みの1つに過ぎませんでした。しかし、新型コロナウイルスによる感染症の拡大は、従来の働き方のままでは事業の継続性そのものに影響を及ぼすため、事業継続を目的としたテレワークの必要性が急遽クローズアップされました。
テレワークのメリット
テレワークには、さまざまなメリットが存在します。具体的には、「働き方改革」でも挙げられている「少子高齢化対策の推進」「ワークライフバランスの実現」「地域活性化の促進」「環境負荷軽減」などです。
現在、日本では少子高齢化によって、生産年齢人口が減少傾向にあります。そのため、少しでも多くの人を労働力として活用する必要がありますが、「育児や介護のため家を出られない」「身体的な理由で長時間の通勤が困難」などの理由で、従来の働き方では労働に従事できない人も少なくありません。しかし、テレワークでは働く時間や場所の制約が少なくなるため、より多くの人材が就業しやすい環境を作ることが可能です。
また、事業者の視点から見ると、オフィスのワークスペースや通勤交通費を削減することによって、事業継続のためのコスト削減が可能になるというメリットがあります。また、従業員がオフィスに集まる必要がないため、「都市封鎖(ロックダウン)などで出社が不可能になった場合でも業務を継続できる」「感染症によるパンデミックを回避できる」という効果もあり、結果として事業の継続性を高められます。
テレワークのデメリット
テレワークにはメリットだけでなく、労働者が顔を合わせずに働くことによるデメリットも存在します。
まず、労働の状態が目で見えづらくなるため、労務管理(労働時間の管理・把握)が困難になる点です。また、労働者同士のコミュニケーションが減少する点も挙げられます。これは単に業務上の情報共有が不足するだけではなく、会話もなく1人で働き続けることによる心理的なストレスも無視できない問題です。
とはいえ、ITを活用することでこのような問題は解決・軽減することが可能です。Web上から利用できるタイムカードなどを導入すれば、労働時間の管理や把握は容易になります。テレワーク中のコミュニケーションには、文字によるチャットシステム(Slackなど)がよく利用されています。また、ビデオ会議・ビデオ通話システム(Zoomなど)を利用することで、テレワーク環境同士で会議が完結する方法が普及しつつあります。
テレワークの導入を阻む問題とは
前述のように、テレワークそのもののデメリットはそれほど多くありません。まったくデメリットがないとは言えませんが、それらの多くはITツールの支援によって、十分に克服可能です。しかし、それでもまだ導入が困難であったり、導入に躊躇する企業が多いことも判明しています。その主な理由としては、以下のようなものがあります。
まずは、会社としてテレワークを行うための制度・ルール整備がなされていない場合です。テレワークでもオフィスワークと同様に「始業・終業の時刻や休憩時間はどうするか」「テレワークに必要な費用はどう負担するか」「人事評価制度はどうなるか」など、さまざまなルール・制度が必要です。しかし、テレワークで働くことを想定すらしていなかった企業であれば、このようなルールがそもそも就業規則に定められておらず、結果として「制度がないため実施できない」となりがちです。
次にテレワークのための設備投資がなされていない場合です。テレワークを行うためには、自宅で利用するPCやインターネット回線が必要になりますが、こうした設備を全社員が自宅に備えているとは限りません。会社として支給するにしても、コスト的に実現できない可能性もあります。また、自宅から会社内のネットワークに接続して業務を行う場合、VPNなどのセキュアなアクセス経路を確保する必要があります。しかし、「社外から社内へのアクセス経路が存在しない」「VPNはあるが、全員が同時に利用できるほどのパフォーマンスが出せない」などという場合も考えられます。このようにテレワークのための設備が不足している状態では、テレワークで業務を継続することは困難でしょう。
最後にセキュリティ上の問題でテレワークを行えない場合です。例えば、インターネット経由での業務システムへのアクセスや自宅での機密データへの閲覧などがセキュリティポリシーで禁止されている場合が考えられます。
テレワークを導入するためには、このような導入を妨げる理由を可視化し、1つずつ解決していかなければなりません。なお、セキュリティ上の問題でテレワークを導入できないのであれば、総務省の「テレワークセキュリティガイドライン」が問題解決の参考になるでしょう。
FJcloud-Vで提供しているテレワーク関連機能
FJcloud-Vでは多くの機能を提供していますが、その中にはテレワークに役立つ機能も提供しています。
「リモートアクセスVPNゲートウェイ」は、FJcloud-VのプライベートLANにセキュアに接続できる「リモートアクセスVPN」を提供します。リモートアクセスVPNゲートウェイを使えば、自宅や外出先からFJcloud-Vへセキュアな接続が可能になるため、場所を選ばずに業務を継続することができます。セキュリティ対策についても、ファイアウォールやWorkload Securityなどの機能・サービスを利用すれば、テレワーク環境のセキュリティを向上させることができます。
これからテレワークをはじめるために
短期間で簡単にリモートワーク環境を構築するには、SSL-VPN接続を利用して、自宅からオフィスへ接続できるようにする方法が最適でしょう。 仮想デスクトップ(VDI)の導入も有効ですが、利用開始まで比較的時間がかかったり、ある程度の大人数でなければコストメリットが得られない場合もあるためです。
FJcloud-Vでは、短期間で簡単にリモートワーク環境を構築する手順として、オンプレミスとFJcloud-Vでハイブリッドクラウドを構築し、リモートアクセスVPNゲートウェイを経由してWindows Serverのデスクトップを利用するという方法をおすすめしています。この構成であれば、VPNを経由してWindows RDS(リモートデスクトップ)を使って、自宅からサーバー上のOfficeアプリを利用することも可能です。
なお、VDIなどのサービス全般に言えることですが、サーバーがクラウド上で保護されているとはいえ、手元のPC(企業支給、個人所有を問わず)のセキュリティ対策は別途行う必要があることには注意してください。