基礎知識
クラウドでサーバー管理の運用負荷が軽減
現代の社会や企業にとって欠かせない存在であるITシステムは、さまざまなサービスを提供するコンピューター(サーバー)の上で動いています。つまり、ITシステムを円滑に機能させるためには、その基盤となるサーバーが安定稼働していることが大前提です。そのためにも、日常的なサーバーの保守管理は重要な業務となっています。
サーバー管理の業務内容とは
サーバーの管理業務は、サーバーの構築作業と構築したサーバーの運用・保守作業に分けられます。サーバーやネットワーク機器(例:ルーター)などのハードウェアを自社やデータセンター内に設置し、ユーザー自身で管理運用する形態(オンプレミス)においては、主に次のような構築作業、運用・保守作業があります。
オンプレミスの構築作業
構築作業において、最初に行うのがシステムに必要な要件を洗い出し、要件を満たすサーバー構成を設計する作業です。例えば、「アプリケーションが動作するWebサーバーを○台、バックエンドのデータベースサーバーを○台、それぞれにメモリとストレージは○○GBを搭載」のように構成を決め、必要なハードウェアを手配します。
次に手配したハードウェアをラックに設置する作業(ラッキング)を行います。この際、メンテナンスのしやすさや故障時の修理交換作業なども考慮に入れ、ハードウェアを設置する位置は慎重に決定する必要があります。
ハードウェアの設置が完了したら、サーバーやルーターなどの機器同士をネットワークケーブルで繋いでいきます(ケーブリング)。多くのハードウェアが設置されたラック内のネットワーク配線は、非常に複雑になりがちです。接続するハードウェアを取り違えることがないよう、またラッキングと同様にメンテナンスのしやすさを考慮しつつ、将来的なハードウェアの入れ替えにも対応できる余裕を考慮するなど、配線の整理には気を配る必要があります。
物理的な設置作業が完了したらサーバーを起動し、OSやミドルウェアをインストールして、必要なソフトウェアの設定を行います。
オンプレミスの運用・保守作業
サーバーを運用し続けていると、さまざまなトラブルが発生します。そのため、運用担当者はサービスが正常に稼動しているかを常に監視し、万が一、異常が発生した場合には、適切な対処を行わなければなりません。運用・保守作業の中でもっとも重要なのが、こうしたサーバーの状態(CPU負荷・メモリのリソース状況・プロセスの稼動状況など)の監視と障害発生時には迅速に復旧作業を行う障害対応です。例えば、ソフトウェアのエラーで突然停止してしまったサービスを再起動したり、ハードウェアに故障が発生した場合には、修理や部品交換といった対応を行います。
サーバーのセキュリティ対応も重要な運用保守作業の1つです。長期間、サーバーを運用し続けていると使用しているサーバーOSやミドルウェアに脆弱性が発見されることがあります。常日頃から公開される脆弱性情報をチェックし、万が一、影響を受ける脆弱性が発見された際には、プログラムに修正パッチを当てたり、脆弱性を回避するための設定変更を行わなければなりません。
また、ハードウェアには寿命があるため、サーバーは約5年のサイクルでリプレイスを行う必要があります。ハードウェアのリプレイス作業は、オンプレミス環境で運用を行っている以上は避けられず、また対応の期限も明確に決まっているため、運用保守の中でも特に大変な作業の1つです。昨今、2025年の崖問題などでIT人材の不足が叫ばれており、こうした作業を少人数で対応せざるをえないケースも多く、運用担当者の負担はどんどん大きくなっているのが現状です。
クラウドの導入で運用・保守コストを軽減
このように増大し続ける運用負荷を軽減するための、有効な解決策の1つがクラウドの利用です。クラウドでは、ハードウェアの管理はクラウド事業者が担当するため、運用担当者はラッキング・ケーブリングやリプレイスなどの物理的な構築・保守作業から解放されます。また、クラウド事業者によっては、ハードウェア故障時にほかの物理サーバーへ切り換わり再起動する「自動フェイルオーバー機能」の実装や「構成コンポーネントの二重化」など、さまざまな可用性向上対策を行っています。そのため、クラウドの利用が単なる運用・保守のコスト軽減に留まらず、サービスの品質向上に繋がる場合もあります。